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次世代ADAS戦略と競合動向調査

·74 文字·1 分·

次世代ADAS戦略と競合動向調査 #

本記事では、ホンダが発表した次世代ADAS(高度運転支援システム)戦略に対し、主要競合プレイヤーの動向を整理し、これまで採用してきたMobileye技術をE2E自動運転世代で用いなかった背景を推察します。


1. 主要競合プレイヤー #

1.1 OEM垂直統合型 #

  • テスラ(FSD v12/HW4)

    • 全車カメラ入力を単一のニューラルネットワークで処理し、操舵や加減速を制御
    • 高速道路や市街地での実用化を進め、OTAによるモデル更新を頻繁に実施
  • XPeng(小鹏汽車)

    • 視覚ニューラルネットワークと大規模言語モデルを組み合わせるハイブリッド方式
    • 中国全域で都市部NOA(ナビゲート・オン・オートパイロット)を展開
  • Li Auto(理想汽車)

    • E2Eモデルとビジョン・ランゲージ・モデルを組み合わせたデュアルアーキテクチャ
    • HEVでも動作可能なNOAを提供

1.2 AI/Tier1パッケージ型 #

  • Wayve(英)

    • 自動運転専用のデータ駆動「Embodied AI Driver」を提供
    • 日産自動車の次世代ProPILOTに採用予定
  • Huawei

    • 地図依存を減らす「ADS 2.0/3.0」を展開
    • 高精度地図不要で全国都市部NOAを実現
  • Horizon Robotics

    • 10~560 TOPS可変の専用SoC「Journey」を中心にSuperDriveを提供
    • 中国主要OEMへ外販し、100車種以上で採用
  • Mobileye

    • EyeQシステムとルールベース層を組み合わせたSuperVisionを中心に展開
    • 従来型ADASでは高い実績を誇るが、純粋E2E型においては限定的に利用

1.3 汎用チッププラットフォーム型 #

  • NVIDIA DRIVE

    • 高性能SoC「Thor/Hyperion」で2000TOPS級の演算能力を提供
    • メルセデスやボルボなど高級車メーカーに採用
  • Qualcomm Snapdragon Ride

    • ADASと車載情報機器を1チップで統合可能な高効率プラットフォーム
    • BMWやGMなど幅広いOEMに対応

2. ホンダの競争軸と戦略ポイント #

  1. 省電力かつ高効率な演算:HEVや小型車での搭載を前提に、チップの演算性能と消費電力の最適化が必須
  2. OTAによる迅速な更新:E2E自動運転モデルはデータ量が勝負。頻繁なソフト更新基盤が競争力を左右する
  3. 地図依存の低減:高精度地図なしで市街地NOAを実現する汎用性が求められる

3. MobileyeをE2E世代で採用しなかった推察理由 #

  1. アーキテクチャ思想の差異
    Mobileyeは従来のモジュラー+ルールベース手法を重視し、純粋E2Eアーキテクチャへの移行に慎重だった

  2. データ主権の確保
    OEMが自社で学習サイクルを回し、データを蓄積・活用することを重視するホンダの戦略と合致しにくい

  3. 電力・熱設計の自由度
    固定された消費電力枠での動作設計が多いMobileyeチップに対し、ホンダは独自SoC+車両冷却システムで対応したい狙い

  4. ライセンスコストとロイヤリティ
    長期的な車両販売目標を考慮すると、チップ+ソフト一体型のロイヤリティ負担が増大する可能性

  5. 将来機能との整合性
    段階的なレベルアップ(L2+からL3眼離しへ)を見据えた拡張性と統合ロードマップの柔軟性を重視

  6. サプライチェーン多様化
    TSMC依存など地政学リスク回避の観点から、ベンダーロックインを避ける意図


4. 結論 #

ホンダの次世代ADAS戦略は、低消費電力で高性能を追求する「E2E×NOA」の自前開発に舵を切ることで、テスラや中国勢、AIスタートアップなどの垂直統合型・外販型ソリューションと差別化を図るものです。Mobileyeを採用しない背景には、純粋E2E思想やデータ主権、コスト・拡張性の観点からホンダ自身の開発・運用方針と整合しない点が多く含まれていると推察されます。今後、HEVや小型車への展開も視野に入れた低消費電力E2Eアーキテクチャの実現が、ホンダの競争力向上の鍵となるでしょう。